28/12/2014
【おんじが選ぶ2014年の映画トップ3】
その1「そこのみにて光輝く」
忙しい年の瀬、みなさまいかがお過ごしでしょうか。おんじです。
さて、年末ということで、私が選ぶ「今年の映画TOP3」を発表します。
そこのみにて光輝く
2014年4月公開の日本映画。監督は大阪芸大映像学科出身の呉美保。出演は綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉ほか。
呉監督は、I先生の教え子ということもあり、美専で特別授業をしてくださったこともあるんです。お会いした印象でいうと、とても小柄で柔和そうな方で、その作品の繊細な演出にも監督の人柄がうかがわれます。ただ、今作はその繊細さと同時に相当な力強さも感じさせられました。
原作は佐藤泰志の同名小説。熊切和嘉監督(彼も芸大出身、呉さんの一つ上の学年、彼の今年の作品「私の男」もすごく良かったですが、個人的には昨年の「夏の終わり」の方が好き)の「海炭市叙景」(2010年)に続く、佐藤泰志原作の映画化第二弾。
私は、映画「海炭市叙景」を昨年DVDで観たのをきっかけに、佐藤泰志の小説を6冊ほど読んだのですが、この「そこのみにて光輝く」がいちばん好きでした。それを呉監督が映画にすると聞いて、期待して観にいきましたが、その期待は裏切られることなく、想像以上で非常に満足できました。
もちろん、小説と映画は違います。小説で好きだったシーンが削られることもあります(たとえば最初の約束をすっぽかすとことか)。でも、切なさや傷みや色気、映画でしか表現できない匂いのようなものがしっかり出ていて、新たな別個の価値を持つ作品になっていたと思います。
小説は二部構成になっていて、ドラマティックな第一部と思索的な第二部の対比が面白く、主人公の内面の葛藤がより複雑な第二部の方が私は好きなのですが、映画ではやはり物語として動きがあって完結している第一部をベースにしています。そこに、第二部の鍵概念である「山師」を具体的なエピソードにして、時間軸を逆にしてトラウマ的な記憶として折り込むという細工がなされています。「山という未知のものに対する説明しがたい渇望」という原作第二部の勘所は捨てることになりますが、これはきわめて文学的なテーマであるので、映画に関しては思い切って背景にしてしまったというのは、ある意味、英断だったと思います。
まあ要するに、小説の映画化として理想的な改変がなされていた、ということですね。
演出も映像も、本当に「匂い立つ」感じで、すごく良かったです。未見の方はぜひDVDででも観てほしい。
唯一「8,000円の謎」については、M先生ともども解決できていませんが。
※この記事は、公式サイト「BISEN FILMS」のブログより分割引用しました。http://biseneizo.wix.com/bisenfilms