12/08/2026
少林寺拳法に居合の修行が役に立った事例2.
前述のウレタン刀での切り下ろしを蟹脚,蜘蛛脚,前後千鳥の体捌きで捌くという修練で,切り下ろす攻者を担当したときの話です.
普段の居合の修行と同じ様に,起こりの無い切り下ろしを心掛けると,ほぼ百発百中 ,守者は殆ど避けられないのです!流石に高段位の幹部拳士は捌けていましたが,高校生相手とかだと面白い様に当たってしまいます.振り下ろしを早くしたわけでは無く,寧ろゆっくりめに振り下ろしても,起こりが無ければ捌くのは困難なのだと言うことです.
実は,目に入ってきた情報を脳が視覚情報処理するのに約0.3秒もかかります.視覚情報によって行動を起こすのは,映像として認識するよりも少し速いのですが,それでもウレタン刀が振り下ろされる時間よりはずっと長くかかってしまうのです.つまり,ウレタン刀が動き始めるのを視認してから動こうとしても,視認したときは既に当たっていることになるのです.では,捌ける人はどうやって捌いているのかというと,振り下ろしが始まる前の微妙な予備動作ーこれを居合では起こりといいますがーを察知して,実際にウレタン刀が振り下ろされるより先に回避行動を開始するのです.ということは,この起こり無しで振り下ろせるならば,高確率で相手をヒットできることになります.
実際,高校生の拳士が「速い,見えない,どうやってやってるんですか?」というので,「では,通常モードです」と言って速度は殆ど変えずにわざと起こりを発したところ,ほぼ100%捌けていました.逆に,「では,次は真剣モード」といって起こりを消すと(それでも残っているは思いますが),ほぼ100発100中になる.高校生の拳士は不思議だ,不思議だと言って面白がっていましたが,実際の居合の速さとは,やはり剣を振る速さでは無く,初動,起こりが無いことであると強く実感しました.この起こりを無くすことについて,形稽古は絶大な威力を発揮します.その脱力の技術は,勿論少林寺拳法にも応用可能なのです.