23/08/2026
第17回幼児教育実践学会(2026)参加日誌 荒尾第一幼稚園のポスター発表のまとめ等の要約【停滞から見えてきた、環境の再構成】
数日間続くプロジェクト活動の中で、子どもたちは、思うように作れなかったり、方法が見つからなかったりする壁にぶつかる。
これまで私たちは、その壁を乗り越えようとする姿の中に、粘り強さや協働、工夫を凝らす思考力の芽生えなど、さまざまな育ちを見いだしてきた。
しかし、活動はいつも順調に進むわけではない。子どもたちが活動から離れ、停滞することもある。そのようなとき、保育者が環境を再構成することで、活動が再び動き出すことがあった。
実践を重ねる中で、停滞を単に「意欲がない」という子ども個人の問題として捉えるのではなく、モノや状況との出会い方が関わっているのではないか、という感覚が強くなっていった。
当初は「停滞をどう乗り越えるか」を研究の目的としていた。しかし実践を振り返る中で、停滞とは、子どもと仲間・モノ・場所・時間・状況との関係がうまく結ばれなかったときに生まれる出来事なのではないか。そして保育者に求められるのは、子どもの意欲の有無を問うことだけではなく、関係の結ばれ方を読み取ることでもあるのではないか、と考えるようになった。
そこで本研究では、活動が停滞した三つの事例を、子どもと環境との「関係」に着目して考察した。
一つ目は、キリンづくりである。
何をしてよいか分からない状況が続く中、保育者はやり方を教えず、子どもたちの主体性を尊重して見守っていた。そこへ家庭から持ち込まれた「筒」という偶発的な出会いが生まれ、活動が再び動き始めた。
二つ目は、海賊船づくりである。
場所が変わったことで、それまで続いていた「作ること」と「遊ぶこと」の往還が途切れ、活動が停滞した。保育者がその関係を読み取り、環境を再構成したことで、活動が再び動き出した。
三つ目は、ボンドを使った活動である。
子どもたちがボンドという素材の性質を知る経験が十分ではなかった。保育者が子どもと素材との関係を読み取り、環境を再構成したことで、子どもたちはボンドの性質に気づき、活動を展開させていった。
三つの事例に共通していたのは、停滞が子どもの意欲の低下によって生じたのではなく、子どもと仲間・モノ・場所・時間・状況、そしてこれまでの経験との関係が、結ばれにくくなったときに生じていたことである。
また、その関係が結び直されるきっかけは、保育者による意図的な環境の再構成である場合もあれば、見守る中で生まれた偶発的な出会いである場合もあった。
このことから、保育者が問うべきなのは、「この子に意欲があるか」だけではなく、「いま、どの関係が結ばれにくくなっているのか」ということではないかと考えた。
当初、私たちは、停滞とは原因を取り除けば解決し、再び前へ進めるようになるものだと考えていた。
しかし、キリンの事例では、首を接続する中で見つけた方法が足づくりへと広がり、子どもたちは一度完成していた足を自ら外し、もう一度作り直し始めた。
作業として見れば、同じ課題に戻っている。しかし、そこには技術的な工夫だけでなく、友達と声をかけ合い、互いの思いを伝え合いながら活動を進める姿があった。それは、保育者にとっても予想していなかった展開であった。
停滞は、単に乗り越えるべき失敗とだけでは見られない。
停滞があるからこそ、それまでとは異なるモノや方法と出会い、子どもと環境との関係が新たに結び直されることがある。
環境の再構成とは、子どもと仲間・モノ・場所・時間・状況、そしてこれまでの経験との関係の変化を丁寧に読み取り、思いがけない展開も受け止めながら、子どもたちの活動が新たな方向へ動き出すことを支える営みなのではないだろうか。