25/03/2026
【フィットネス業界の「継続率92%」から人材育成が学べること】
研修プログラムを導入したものの、「受講者が続かない」「効果が定着しない」という悩みを抱えていませんか? 実は、全く異なる業界の研究から、継続率向上のヒントが見つかりました。
研究の概要:フィットネス業界のパーソナルトレーニング効果を検証
今回紹介するのは、インドネシアのセレブリティフィットネス・パラゴン・スマランにおけるパーソナルトレーニング(PT)プログラムの効果を検証した研究です(Subekti, Setyawati, Raharjo et al., 2026)。
この研究では、1,243名のクライアント、13名のトレーナー、2名のセールスマネージャーを対象に、混合研究法(量的データ+半構造化インタビュー)を用いて分析しました。統計手法として記述統計、対応のあるt検定、回帰分析を実施し、質問票の信頼性係数(クロンバックのアルファ)は0.89と高い水準を示しています。
主要な研究結果
研究の結果、以下の事実が明らかになりました。
1. PTプログラムが売上と継続率を大きく向上させた
PTの売上は83%増加し、クライアントの継続率は6月に92.44%に達しました。ただし、3月から5月にかけては変動が見られ、安定した効果を得るには一定期間が必要であることも示されています。
2. 継続率を左右するのは「関係性」だった
回帰分析の結果、クライアントの満足度とトレーナーとの関係性が、継続率の最も強力な予測因子であることが判明しました。一方、セッション頻度の影響は中程度にとどまりました。つまり、「どれだけ多く通うか」よりも「トレーナーとの関係性に満足しているか」が継続を左右するのです。
3. 心理社会的要因の重要性
論文は、プログラムの成功において心理社会的要因(psychosocial factors)が重要であると結論づけています。プロモーション戦略、サービス品質、指導者との交流、そして心理社会的要因の相乗効果が、短期的な売上だけでなく長期的なロイヤルティ構築にもつながるとしています。
人材育成への示唆:異業種の知見をどう活かすか
この研究はフィットネス業界を対象としたものであり、企業の人材育成に直接適用できるわけではありません。しかし、いくつかの示唆が得られます。
第一に、プログラムの「内容」だけでなく「関係性」が継続に影響する可能性です。フィットネスではトレーナーとの関係性が継続率の最強の予測因子でした。企業研修においても、講師や上司との関係性が受講者の学習継続に影響するかどうか、検討する価値はあるでしょう。
第二に、頻度よりも質が重要かもしれないという点です。セッション頻度の影響が中程度にとどまったという結果は、「研修の回数を増やせば効果が上がる」という単純な考え方に再考を促します。
第三に、心理社会的な要素を設計に組み込むことの可能性です。フィットネスで社会的交流がロイヤルティに影響したように、研修プログラムにおいても受講者同士の交流機会や、支え合える環境づくりが効果を高める可能性があります。
まとめ
この研究が示した重要なポイントは以下のとおりです。
・継続率を高めるのは、頻度よりも満足度と関係性:回帰分析で実証された知見
・心理社会的要因がプログラム成功の鍵:論文の結論が示す重要な要素
・異業種の実証研究から学ぶ視点:フィットネスの知見を人材育成の文脈で捉え直す
※本記事で紹介した数値(売上83%増、継続率92.44%)はフィットネスクラブにおけるPTプログラムの結果であり、企業研修の数値ではありません。
参考文献
Muhammad Rian Subekti, Heny Setyawati, B. Raharjo et al., 2026, "Personal training program effectiveness on sales performance and client retention: a case study of Celebrity Fitness Paragon Semarang"
#人事 #人材開発